誘発分娩で無事赤ちゃんが出てきた後、胎盤娩出を行いました。
そのときに1.5Lの失血を経験したのです。
この記事では、分娩時の出血過多とはどのようなものか・実際に受けた処置の内容や経過まで説明します。
・分娩時の出血過多について知りたい人
・出血過多の処置を受けた人
目次より好きな場所に飛べます。
分娩~後産では出血がある
まず、出産時の出血について説明します。
分娩時の出血
分娩時に全く血が出ないことはありません。
子宮破裂や前置胎盤などのトラブルが原因で出血することもありますが、問題のないお産だったとしても出血はあります。
後産(胎盤娩出)の出血
出産後に胎盤が出ることを後産と言います。
後産でも出血が見られますが、これも正常なことです。
しかし、赤ちゃんが出てきた後も子宮が収縮しない子宮弛緩という状態になると、胎盤が剥がれた際に開いた血管から血が出続けます。
出血過多とは?
出血過多とはどういった状態なのか説明します。
通常の出血量は?
自然分娩(経膣分娩)の場合、分娩から後産にかけて通常であれば500ml程度の出血があります。
多いように感じられるかもしれませんが、500mLまでは正常な出血量です。
帝王切開の場合はもともと出血量が多くなりやすく、約1,000mLの出血量になってもおかしくありません。
多胎の場合も出血量が増えやすい傾向があります。
何mLから出血過多?
経膣分娩では800mL以上の出血があると出血過多です。(500mLや1,000mLで出血過多とみなすこともあり)
出血過多は分娩後異常出血、産科危機的出血とも呼ばれます。
分娩と胎盤娩出の際の出血だけでなく、分娩からしばらくの間の出血も含まれるそうです。
明確なルールはないようですが、分娩から数時間または24時間の出血を含むケースが多いと言えます。
出血過多の要因
出血過多の要因には次のようなものがあります。
初産・2度目以降の帝王切開・多胎分娩・早産・前置胎盤・低置胎盤・巨大子宮筋腫合併・癒着胎盤・羊水過多・巨大児・誘発分娩・肥満・遷延分娩・短時間分娩・器械分娩(吸引分娩・鉗子分娩)・妊娠高血圧症候群・臨床的絨毛膜羊膜炎
ちなみに、私は初産・誘発分娩・器械分娩に該当しました。
自分では判断が難しいのですが、肥満・短時間分娩・癒着胎盤の可能性もあります。
調べてみると、私にはリスク因子がたくさんあったことが分かりました。
出血過多が起こる割合
出血過多はどのくらいの人が経験するのか気になったので調べてみました。
重症分娩後出血と定義される1,000mL以上の出血は、日本で2~5%の出産で起こっているようです。
100回の出産のうち2~5回の割合と考えると、少なすぎるというわけではないと思いました。
出血量が多いとどうなる?
出血量が多いと血圧が低下しますが、更に多くの失血になると意識を失うことがあるようです。
出血が続いて血液の多くが失われたり血液の少ない状態が長く続いたりすると、命を落とす可能性があります。
こうした状況を回避するために、出血量が多いときには迅速かつ適切な処置が必要です。
死亡率は?
出血過多が起こった妊婦の死亡率は見つかりませんでした。
ですが、厚生労働省の人口動態統計より「妊娠、分娩や産褥」での死亡数が分かります。
↓厚生労働省公式HPに掲載されているPDFに飛べます。(P.35参照)
統計によると妊娠、分娩や産褥の死亡数は人口10万人に対して2021年は28人、2022年は33人です。それぞれ0.028%、0.033%の死亡率となります。
日本では産科危機的出血、つまり出血過多による妊婦の死亡が最も多いようです。
人口動態統計の死亡数や死亡率には、他の理由で亡くなる方も含まれているので、出血過多による死亡率の割合はもっと低いと考えて良いです。
日本の出産は安全性が高く、緊急時にも適切な処置が行われることから、出血過多による死亡率も低いと言えるでしょう。
私が経験した後産
ここからは、私が経験した後産の出血過多について書いていきます。
胎盤娩出後に多量の出血
赤ちゃんがなかなか出てこず吸引分娩になったのですが、出産後は胎盤もなかなか出てきませんでした。
噂には聞いていましたが、胎盤を出すためにお腹を押され、やっとのことで胎盤が出てきたのです。
そこまでは良かったのですが、胎盤が出た直後に血も大量に出てきました。
赤ちゃんが出てくるときは「どぅるん!」って感じでしたが、同じような感覚で血が出てきたのです。
「どぅるん!どぅるん!どぅるん!」と、少なくとも3回は血が噴き出しました。
「こんなに出るのか…」と思っていると、「これ1,500は出てるよ」と医師が言い、処置が始まったのです。
処置と同時進行で出た血の重さを確認されたのですが、先生の言っていた通り約1.5kg、つまり1,500mLほどの出血でした。
正常な出血量は500mLまでなので、約3倍の出血です。
処置の内容
処置の順番は曖昧ですが、子宮内にガーゼを入れるという処置が行われました。
直接器具などを見たわけではありませんが、「ガチャコン!ガチャコン!」という音と一緒にガーゼが入ってきたのです。
ポンプのようなものを使っていそうな感じでした。
出産の痛みを経験した後なので、大抵の痛みは平気に思うかもしれませんが、結構痛かったです。
ガチャコン!と音がなるたびに、痛みで「うっ」となっていました。
後に調べて分かったのですが、この処置は子宮内ガーゼパッキングと呼ばれるそうです。
医療費の明細書を確認すると子宮双手圧迫術も実施したようなので、医師がこぶしを入れて圧迫するという処置もしたのかもしれません。
無痛分娩以外は痛みが伴うらしいですが、正直処置中はずっと痛かったので、いつこの処置が行われたのか分からなかったです。
他には、代用血漿剤などの点滴も行われています。
しばらく歩いてはいけないということで導尿もされました。
次の日まで動けないだろうからと、カテーテルを挿入されたのです。
挿入時は少し唸るくらい痛いですが、入ってしまえば意外と快適だったのが驚きでした。
痛いのは抜き差しの瞬間だけです。
経過
出血過多の処置が続いた翌日までの経過を紹介します。
処置が始まった頃には、身体が寒くて仕方がありませんでした。
一気に血を失ったので体温がかなり下がっていたのだと思います。
処置中から処置後は、意識はあるもののボーッとしていました。
赤ちゃんは視界に入る場所で処置を受けていたのですが、集中して見たり産まれたことに感動したりすることがなかったです。
それくらい、頭が回らない状態でした。
処置が終わっても、3時間近く分娩室にいたのですが、途中からは発熱で身体が熱かったです。
3時間ほど経ってからは部屋に戻りましたが、歩いてはいけないのでストレッチャーで運ばれました。
部屋で熱を測ると37.8℃。
ごはんを食べ、点滴の追加や交換を行い、1時過ぎに就寝しました。
3時頃から会陰と子宮の痛みが強くなってあまり眠れず。
子宮の痛みは、出血過多の処置が行われたあたりでした。
翌朝7時頃は熱が37.2℃まで下がっていましたが、まだ身体は熱かったです。
座った状態で血圧を測ってもらうと問題ないようだったので、立てるかどうか歯磨きをして確認することになりました。
歯磨きを始めて少しすると、視界が歪み耳の聞こえがおかしく。
看護師さんが椅子に座らせてくれましたが、支えがなければ倒れ込みそうでした。
結局、点滴とカテーテルは抜いてもらえず。
医師が部屋まで診察に来てくれ、別の種類の点滴を追加することになりました。
10時過ぎには点滴を外してもらい、立ち上がる練習もクリア。
ただ、念のためにもう少し様子を見るとのことでカテーテルは外してもらえませんでした。
お昼頃にようやくカテーテルも外れ、身体に何もついていない状態になったのです。
急に倒れる可能性があるからと、部屋のトイレや洗面台を使うときもナースコールを持って移動するように言われましたが、そこから大きなトラブルはありませんでした。
出血したであろう場所はときどき痛むものの、出産翌日のお昼頃には出血過多によるダメージはかなり回復していたと思います。
母子同室のタイミング
私が利用した産院の場合、普通は出産翌日から母子同室となるそうです。
けれども、翌日の昼まではほぼ寝たきりだった上に、昼以降もなるべく安静にするようにとのことで、母子同室にはなりませんでした。
出産翌日も午後から部屋に赤ちゃんが来ましたが、私が無理をしないようにと2時間ほどで新生児室に戻されたのです。
更に次の日の10時頃からようやく母子同室に。
「身体がつらければ明日から母子同室でも大丈夫だよ」「いつでも預けて構わないから」と、かなり気にかけてもらいました。
出血過多に関するQ&A
出血過多を経験し、いくつかの疑問が出てきました。
入院中や退院後に調べて分かったこと、自分が経験したことをもとにQ&Aを紹介します。
- 入院日数は延びるの?
- 出血過多だった場合、入院日数が延びる可能性があります。私の場合も延びる可能性があると言われていました。出産翌日の午後には何とか体調が回復していたので、入院期間を延ばさずに済んだのです。体調の回復が遅れると本来よりも長い入院日数になるかもしれません。
- 処置にかかる費用は?
- 出産費用は実際に行われた処置や入院日数によって変わってきます。つまり、出血過多による処置を受けた場合は、この処置がなかった場合と比べると出産費用が高いです。出血過多の処置後には、いくら請求されるのか気になりますよね。私の場合、出血過多の処置関係の費用は30,000~40,000円ほどでした。医療費明細書を確認したところ、子宮双手圧迫術が含まれており、これが29,500円。点滴注射が約10,000円。点滴注射は出血過多の処置以外の点滴もまとめられているようだったので、正確な金額は不明でした。仮に入院日数が延びていた場合、1日あたり入院料が10,000円、新生児管理保育料が5,000円請求されていたようです。ただし、私が利用した病院は入院料が安めのようなので、病院によっては入院料がもっと高くなるかもしれません。症状の度合いや実施した処置、選んだ病院などで費用は違ってきますが、入院の延長がなければ50,000円ほどと考えておくと良いのではないでしょうか。入院日数が増えると、1日あたり15,000~30,000円ほどの追加料金が発生することも覚えておきましょう。ちなみに、出産費用の総額は誘発分娩と出血過多の処置費用が含まれて、51万6千円(出産一時金があるので実際の支払いは9万6千円)でした。
- 次の出産でも出血過多になる?
- 一度出血過多を経験すると、次の出産からも出血過多のリスクが上がるようです。100%出血過多になるわけではないものの、リスク因子の1つになることには間違いがありません。子供がほしいと思っている場合は、再び出血過多を経験する可能性があることを理解しておきましょう。また、出血過多を経験したことがある人に助産院での出産はおすすめできません。出血過多の経験があっても受け入れている助産院もありますが、その場で医療行為ができないので多量の出血がある場合は病院に搬送されることになります。きちんと医療機関や医師と提携しているはずですが、医療機関で出産する場合より処置が遅れる可能性が高いことを知っておきましょう。
- 輸血はしないの?
- 輸血は必ず行われるわけではありません。私は輸血をしませんでした。そもそも、輸血するかどうかは失血量によって決まることが多いようです。短時間で失血量が循環血液量の約30%に達した場合は血圧低下となり、40%に達すると意識がなくなって生命の危険があるそうです。循環血液の30~40%の失血がある場合は、輸血する可能性が高くなります。計算してみると、私の場合は全血液量の26%くらいの失血でした。数字だけ見ると26%でも危険そうに感じますが、輸血をしないで良いレベルみたいです。
循環血液量の30~40%は次のようになっています。
・50kg→1,200~1,600mL
・60kg→1,440~1,920mL
・70kg→1,680~2,240mL
循環血液量の計算方法も書いておきます。
自分の体重の場合どうなるのか詳しい数値が気になる方は、次の式を参考に計算してみてください。
例 体重50kgの人の循環血液量の30%が何Lか求めたい場合
人間の血液量は体重の約13分の1(約8%)なので
「体重×8%(0.08)=血液量」
50kg×0.08=4L
「血液量×30%(0.03)=循環血液量の30%」
4L×30%=1.2L
50kgの人の循環血液量の30%は1.2L(1,200mL)
おわりに
分娩時の出血過多を経験して、出産は本当に命がけだと強く思いました。
医師や看護師さんが素早く適切な処置をしてくれなければ、出血が続いて命を落としていてもおかしくないです。
私の体験談を読むことで不安になった人もいるかもしれませんが、脅すつもりで体験談を書いたわけではありません。
様々な理由から出血過多が起こる可能性がありますが、日本の医療機関では必要な処置をすぐに行ってもらえるはずです。
これから出産する人は、出血過多になったとしても適切な処置が受けられて死亡する可能性は極めて低いと知っておいてください。
また、出血過多を経験するとたくさんの疑問や心配ごとがあると思うので、この記事を読むことで少しでも不安がなくなればと思います。